26回都道府県対抗女子駅伝・辰巳悦加選手と島根県チーム応援奮戦記

                                                                                   

                            文章: 松本耕司(高16・北4期:S40卒) 
                            撮影: 押田良樹(高11・S35卒)

                                                                                   

 昨年8月の世界陸上女子3000m障害に出場した辰巳悦加さん(現・神戸のノーリツ所属:高51・北39期:H12年卒)が、11月の近畿双松会総会で来年1月の都道府県女子駅伝に「ふるさと選手」として出場するという報告をされ、総会がおおいに盛り上がったのは記憶に新しいところであるが、私は応援には必ず行くという約束を果たすべく、年末からその準備にとりかかった。

                                                                                   

1.京都島根県人会の活躍と、激励会での健気な選手たち                                                        

 早速、島根県大阪事務所に状況をうかがったところ、応援はすべて現地「京都島根県人会」の采配に委ねられていることと、大会当日に県人会が出店される「出雲そば」のコーナーが、毎年大変な評判であるとのお話もお聞きした。                                

 京都県人会におうかがいを立てたところ、本番では「出雲そば」の出店運営でいそがしく、なかなか自分達はコース沿道での応援がむつかしいので大歓迎であるとのご連絡をいただくとともに、大会前々日の1月11日夕には、島根県選手団の激励会をひらくので、三条大橋西詰めの「加茂川新館」(島根県人にはなつかしい修学旅行の定宿)に、近畿双松会からも是非参加して欲しいとの要請も受けた。

 

 幸いにも、近畿双松会からは私以外に伊藤雅義さん(高1)、佐藤菁治さん(高10)のご協力を得て、勇躍3人で加茂川新館に出向いたが、そこで見たのは、中学生3人、高校生8人を含む12人の選手たち(辰巳さんは風邪のため欠席)で、まだまだ幼いといってもいい選手たちが口々に礼儀正しく応援への感謝や、健気にも郷土のために頑張りたいという決意の挨拶をするのを聞いて、まだ二日前であるにもかかわらず3人とも涙腺が少しゆるみ、明後日は声を枯らすほどの応援をしてあげたいという思いが強く湧き上がってきた。

 激励会終了後、県人会の皆さんと一献を傾ける機会をいただいたが、皆さんの選手達に寄せられる思いに感動するとともに、毎年この選手団をわが子、わが孫として迎えられる幸せを味わっておられることに、羨ましさすら覚えた次第である。

 

 京都にお住まいの皆さんは、大会当日に「出雲そば」の店員として働くことさえ厭わなければ、この至福の思いを味わうことができる訳であり、是非、京都島根県人会へのご入会もおすすめしたいと思う。

  ⇒「京都島根県人会」  会長:小川龍朗氏

   〒6128223 伏見区桃山町弾正島14ー19ー117  
   電話&FAX 075−621−2211
                        
           京都島根県人会の皆さんが出店している競技場入り口の出雲そばの店

 

2.大会当日(1月13日)の応援団は13名

 さて、大会当日、冷え込み厳しい都大路での応援にご参加いただいた方々は、昨年の長居での世界陸上で辰巳さんを応援いただいた陸上部OB(三柳会)の方々を中心とした13名の方々で、激励会ご参加のお二人を加えれば、今回、延べ15名の方々が応援をいただいたことになる。

 

 ⇒15名のお名前(敬称略)は以下のとおり。

 寺本尚由(高5)、大島(三原)千恵子(高9)、押田良樹(高11)、米原(石川)津多恵(高11)、 藤城(稲田)綾子(高12)、吉儀 宏(高14・大会審判として千葉から)、二階堂(糸賀)孝子(高15)、 松本耕司(高16)、木島(中村)光子(高17・審判として)、森口次郎(高36)ご夫妻、 ならびに村上勝美(松江工業卒)ご夫妻

 ★激励会ご参加: 伊藤雅義(高1)、佐藤菁治(高10)

 

3.コース沿道での応援行程

 京都島根県人会のご依頼も受け、我々は辰巳さんだけでなく、島根県選手全体の応援をしようと知恵を絞り、朝一番に西京極陸上競技場にお出でいただける方とは「出雲そば」の出店前に集合し、京都県人会の皆さんにエールを贈った後、各区ごとに出発していく選手バスに乗り込む9人の選手に直接激励の声をかけることにした。これが実は大正解で、選手に励ましの声をかけ、選手からは笑顔が返ってくるという誠にホットなポイントでの声援の醍醐味を味わうことができたのである。
              
             
各区のバスへ向かう選手たち                  応援のぼりを掲げて応援する会員たち

 

 その次の応援予定は辰巳さんの走る2区のポイント地点とした。西京極を出て、阪急・地下鉄と乗り継ぎ、全員の方々と烏丸線「鞍馬口駅」で集合し、そこから平均年齢60数歳の応援団はさらに徒歩で移動し、2区4キロの残り1キロ地点、即ち堀川通りと紫明通りが合流する堀川紫明の三叉路交差点のコーナーで辰巳さんを応援しようというものであった。

 実はこの予定地点は、朝一番の辰巳さんとの短い会話の中で、走る選手も応援団も最も接近できるポイントで、辰巳さんもベストポイントとして喜んでくれた地点でもあった。

 当日、何よりも驚いたのは、遠い神戸の北区からご参加いただいた大先輩の大島千恵子さんが、白地に墨痕鮮やかな「島根・たつみ」と書いた自作の「応援のぼり」を持参されたことで、どうやってこれを持って電車を乗り継いで来られたかは聞き漏らしたが、「のぼり」を先頭にした一団はいやが上にもボルテージが上っていったのであった。
               
                         力走する辰巳悦加さん(2区堀川紫明交差点の手前) 
    
                    
2区応援後、紫明通りで


 2区の辰巳さんの応援後は、記念撮影をして小休憩し、その次は折り返し8区の中学生区間を烏丸丸太町の交差点に移動して応援。その後はただちに再び地下鉄・阪急を乗り継いで西京極に帰り、ゴールを見届けるというのが全体の計画であった。

 

 即ち、合計4地点で応援し、しかもそれを電車で乗り継ごうという、ご年齢を考えればいささか強行軍の計画であったが、さすがに皆さんお元気で最後まで予定通りで行動いただき、最後は西京極競技場での9区アンカーの杉原さんの7人抜きのゴールもしっかり見ることができたという大団円の結果となり、大満足の上、記念撮影をして解散をしたというのが全体の応援行程であった

                          
                                                             島根県チームのゴールを見届け競技場で記念撮影

 

4.辰巳さんと島根県チームのレース結果

 島根県チームは、辰巳さん以外に昨年の世界陸上に女子5000mに出場した杉原加代選手(出雲商業→パナソニック)が出場し、中学生区間3区を走る来海りえ選手(平田・旭丘中)が中学女子1500mで全国2位の記録を持つことから三枚の看板選手を擁することになり、当初の予定ではここのところ続いていた40番台の成績から過去最高の25位(87年第5回大会)を上回るという期待も寄せられての出場であった。

 

 しかし、残念なことに数日前からの辰巳さんからの連絡は風邪で体調が万全ではないが、何とか郷土のために走りたいというものであって、成績よりも出場することに重きをおかざるをえないというものであった。

 結果は病院で点滴を打ってもらっての出場となり、かつ本来期待されていた1区(6キロ)を走ることを回避せざるをえず、2区(4キロ)を走るという本人にとっては残念な結果となったが、それでも主将として体調不良の中で責任を全うしてくれたことには心から感謝したい。

 

 結果は以下のとおりであった。 

   総合34位:2時間24分39秒(42.195キロ)

    1区・6キロ(個人41位・チーム通過41位)

2区辰巳さん・4キロ(27位・33位)

    3区中学生・3キロ(12位・29位)

4区・4キロ(43位・36位)

5区・4.1075キロ(42位・38位)

    6区・4.0875キロ(40位・41位)

7区・4キロ(36位・40位)

8区中学生・3キロ(31位・41位)     

    9区杉原さん・10キロ(22位・34位)というものであった。

 

  2区を走った辰巳さんは自己記録より40秒以上遅く区間27位(昨年は区間6位)という結果であったが、それでも8人を抜くという頑張りを見せてくれた。1区が終わって41位という情報も入り、あとは辰巳さん次第と声を張り上げて応援する我々の目の前を懸命に頑張って駆け抜け、順位を33位に押し上げてくれたが、体調不十分とはいえ、さすがは世界陸上の代表選手、ひときわ映える走りであった。

 後から辰巳さんも応援団の皆さんがよく見え、「たつみ」の「のぼり」には本当にラストの気合いが入ったと言っていたが、我々応援団も十分に満足した瞬間であった。

 

 その後、レースは3区期待の中学生の来海選手が区間12位で4人を抜き29位まで上ったが、4〜8区の選手たちが何とか懸命につなぎながらも、やはり徐々に後塵を拝する結果となり、9区アンカーの杉原選手には41位でタスキが渡るという展開になった。しかし、杉原さんがさすがの走りで7人を抜き、順位を34位に押し上げるという「終わり良し」の結果で終わった。

 

 当初の20位台という目標は、辰巳さんが1区を走れなくなった瞬間からむつかしいとは考えていたが、島根県チームとしては精一杯の結果であったと思う。特に二日前の激励会でまだ可愛らしいと言ってもいいような中学生・高校生たちの健気な決意表明を聞いたばかりだったので、とてもよその子、よその孫という感覚で応援することはできず、思わず、各選手のご家族のお気持ちまで推し量ってしまった次第であった。

 決して恵まれているとは言えない島根県の条件、環境の中で、選手たちに本当によく頑張ってくれたと、心から感謝とねぎらいの気持ちを贈りたいと思う。

 

5.この大会は魅力が一杯、島根の選手たちにも万歳!!

 この大会は、都道府県対抗として、中学生区間やふるさと選手の制度もあり、日本人のメンタリティーにはピッタリの大会で、都大路はそれぞれの都道府県を応援する人で溢れ返っていた。

 テレビ観戦は欠かしたことのなかった私だが、今回、初めて目の前をカラフルなユニフォームで、抜きつ抜かれつの熱戦を演じ、各県の代表として懸命に走る47人の選手たちの姿を見て、テレビでは絶対に味わえない鮮烈な印象を受け、ナマの迫力を強く感じた。

 

 その一方で、戦いが終わって、京都県人会の皆さんがふるまう「出雲そば」を顔をほころばせていただく選手たちの姿も強く記憶に残った。その姿はどの県の出店でも似たような光景として見られたが、県人会の小川会長が島根は特別にホノボノとした雰囲気がただよっていると言われたが、なるほどそのとおりで、えもいわれぬ素晴らしい同県人間の交流の光景であった。

 800食準備されたという蕎麦が数時間で完売されていくのも驚きであったが、何よりも選手たちには、一生、心に残る強烈な、そしてあたたかい「出雲そば」体験であったに違いない。

 

 陸上競技の大会には十分慣れているつもりの私も、この大会には新鮮な感動を覚えた。重複するが、特に島根代表の中学生・高校生たちの礼儀正しさや、応援する人たちへの感謝をあらわす姿勢には感銘を受けた。

 厳しい練習に耐えたであろう、この年代なりでの誠にすがすがしい人格に触れることができ、そして、同県人として、その姿に対して実際に声援を贈ることができる幸せを強く感ずることができた。その先輩格である辰巳さん、杉原さんの素晴らしさは言うには及ばないことであろう。

 

 近畿双松会の一員である辰巳さんが北京出場を決めるまで応援をしていく一環として、この都道府県女子駅伝の応援も企画したが、辰巳さんは勿論だが、何が何が、この駅伝大会自体が人の心をもゆさぶる素晴らしい内容を持っていたことをあらためて強く認識させられたのであった。

 

6.来年も、又、応援したい!!

 応援にご参加いただいた皆さんは、それぞれ、「テレビよりもナマ」のお気持ちで、そして、「郷土愛」に触れたくて、来年も又、応援したいと思われたことであろうが、私自身も自宅観戦を決め込んでいた過去25年の大会が勿体なくてたまらないという心境である。

 来年も京都で、1月11日(日)に開催されることは決まっている。来年はどんな島根県選手団ができあがるのであろうか。そして、再びどんな感動を味わえるのであろうかと今から楽しみにしている次第である。

 

 

もし、一度、自分も応援をとお思いの方があれば、時期が近づいたらご連絡をいただければ、よろこんでご案内しようと思う。何しろ、私自身がもう来年も応援に行くことを決めており、ご遠慮は無用なのである。 
                                                                                 

                                                                                                                             

 

  ⇒ご希望の方は12月頃になれば下記まで。                                                                                                                             

        松本耕司: 携帯 090−6609−8817

: メール k-matsumoto@hi-ho.ne.jp

                                                              以上